Raspberry Pi OS の書き込み(Imager)
Raspberry Pi は本体にストレージを内蔵せず、microSDカードにOSを書き込んで起動します。書き込みには公式ツール Raspberry Pi Imager を使うのが確実です。Imager ではOSの種類を選び、書き込み先のmicroSDを指定するだけで準備が整います。さらに歯車(設定)ボタンから、ホスト名・SSHの有効化・Wi-FiのSSIDとパスワード・ユーザー名を事前に設定でき、画面やキーボードをつながないヘッドレス運用の下ごしらえができます。
Raspberry Pi は、クレジットカードほどの大きさの基板1枚にコンピュータの機能をまとめた、シングルボードコンピュータだ。
普通のパソコンと大きく違う点が一つある。パソコンを開けると必ずある内蔵ストレージ、つまりハードディスクやSSDが、この基板には見当たらない。
OSやアプリは、すべて外部のmicroSDカードに入れる。起動のたびにそこから読み出して動くので、microSDがパソコンでいう内蔵ディスクの役割を丸ごと担う。
ここに使う Raspberry Pi OS は、Linux をベースにした公式OSだ。デスクトップ画面付きの版から、画面を持たない軽量な Lite 版まで、複数の種類が用意されている。
だから最初の一歩は決まってくる。このOSをmicroSDへ正しく書き込むことだ。
空のmicroSDをただ挿しても何も起こらない。OSのイメージ(ディスク全体の中身を丸写しした起動可能なデータ)を専用ソフトで焼き込んで、はじめて起動できる状態になる。
💾 何を使えば、OSをmicroSDへ焼けるのか
書き込みに使う公式ツールが Raspberry Pi Imager だ。Windows・macOS・Linux 版が公式サイト(raspberrypi.com/software)から無償で入手でき、PCにインストールして使う。
使い方はシンプルだ。microSDをカードリーダー経由でPCにつなぎ、Imager を起動すると、操作の柱になる3つのボタンが並ぶ。
1つ目の「デバイスを選択」で対象機種(Raspberry Pi 5 など)を選ぶ。2つ目の「OSを選択」で書き込むOS(迷ったら推奨の Raspberry Pi OS)を選ぶ。3つ目の「ストレージを選択」で書き込み先のmicroSDを指定する。
あとは「次へ」を押して書き込みを始めるだけだ。Imager は必要なイメージをインターネットから自動でダウンロードして焼いてくれるので、自分でイメージファイルを探して用意する必要がない。
手元にダウンロード済みのイメージがある場合は、OS一覧の下のほうにある「カスタムイメージを使う」から自分のファイルを指定することもできる。
だが Imager の本領は、ただ焼くだけにとどまらない。書き込みと同時に、OS側の初期設定まで仕込めるのだ。
書き込み開始時に「OSのカスタマイズ設定を使いますか」と尋ねられる。ここで「設定を編集する」を選ぶと、いくつかの設定を起動前にまとめて書き込める。
書き込める項目はこうだ。ホスト名(ネットワーク上での機器名、例: raspberrypi)、ユーザー名とパスワード、Wi-FiのSSIDとパスワード、ロケール(言語・タイムゾーン・キーボード配列)、そしてSSHの有効化。古い版ではこの画面が歯車アイコンから開いた。
これらを事前に入れておくと、画面・キーボード・マウスを一切つながず、microSDを挿して電源を入れるだけで、ネットワークに上がり、別のPCから操作できる状態になる。
この、ディスプレイ等をつながず遠隔だけで使うやり方をヘッドレス運用と呼ぶ。実務ではこちらが主流だ。
とくにSSHの有効化とWi-Fi設定は、ヘッドレス運用を成立させる要になる。この2つを忘れると後でつまずくので、ここで覚えておきたい。
⚠ いちばん怖い失敗は、どこに潜むのか
最も怖い失敗は、書き込み先のストレージを取り違えることだ。
Imager は指定したドライブの中身を問答無用で全消去してから書き込む。うっかりUSBメモリや外付けディスクを選ぶと、そのデータが丸ごと消える。
対策はシンプルだ。書き込み前にドライブの容量と名前をよく確かめ、関係のない外部ストレージは事前にPCから外しておく。
次に多いのが、書き込み中にWindowsが「ドライブを使うにはフォーマットする必要があります」という小窓を出すケースである。ここで「ディスクのフォーマット」を押すと書き込んだ内容が壊れるので、必ず「キャンセル」を押す。
書き込みが終わったmicroSDをPCで開くと、ごく小さな領域しか見えず「容量が減った」と驚くこともある。だがこれは、起動用の領域だけがWindowsから見えているだけで、故障ではない。そのまま本体に挿せば正しく起動する。
もう一つ気をつけたいのが、OSのバージョンと設定の取りこぼしだ。
古いOSイメージは新しい機種で起動しないことがある。Raspberry Pi 5 では新しめのバージョン(Bookworm 以降)を選ぶのが無難だが、これは Imager の推奨を選んでおけば自動的に満たされる。
Wi-Fi を事前設定したのにつながらない場合は、いくつかの原因を疑う。SSID の大文字小文字やパスワードの打ち間違い、2.4GHzにしか対応しない設定で5GHz帯のみのアクセスポイントを指定していないか、Wi-Fiを使う国の設定が抜けていないか、だ。
そして先ほど触れたSSH。これを有効にし忘れると、ヘッドレス運用で起動後にどこからも入れず、結局ディスプレイをつなぐ羽目になる。
カスタマイズ画面では、SSHの有効化とユーザー作成、Wi-Fi、ロケールをひとそろい確認してから書き込むのが確実だ。
🔁 この道具は、初回だけのものなのか
Raspberry Pi Imager は、単なる初回セットアップの道具にとどまらない。
microSDは書き込みの繰り返しに弱く、ある日突然起動しなくなることがある。だから、同じ設定のカードを予備として焼いておく、トラブル時にまっさらな状態へ作り直す、といった「焼き直し」の場面でも繰り返し使う。
設定を一度決めてしまえば、Imager のカスタマイズ設定は次回も引き継がれる。複数台のRaspberry Piに同じホスト名規則やユーザーで一気に展開するのも容易だ。
台数が増える現場では、この事前設定のおかげで「電源を挿すだけでネットワークに上がってくる」状態を量産でき、セットアップの手間が大きく減る。
Raspberry Pi OS・microSD・Imager・ヘッドレス運用という4つの言葉は、いずれもこの最初の書き込み作業で一度に出会う基礎概念だ。ここを丁寧に押さえておくと、以降の初回設定やリモート接続が驚くほどスムーズに進む。
つまずいたら、まず1枚、画面なしで起動できるmicroSDを自分の手で作るところから始めよう。