ネットワーク設定とIPアドレスの確認
遠隔操作するには、ラズパイが今どのIPアドレスを持っているかを知る必要があります。最も手軽なのは hostname -I で、割り当てられているIPアドレスだけを表示します。詳しい状態(インターフェース名やUP/DOWN)まで見たいときは ip addr を使います。Wi-Fiやホスト名は raspi-config からも設定でき、ホスト名を決めておけば IPアドレスの代わりに ホスト名.local で接続できることが多いです。
Raspberry Pi をネットワーク越しに操作するには、その機器が今どのIPアドレスを持っているかを知る必要があります。IPアドレスはネットワーク上での住所にあたる番号で、SSHやVNCで接続するときの宛先になります。家庭やオフィスの多くの環境では、ルータがDHCPという仕組みで起動のたびに自動でアドレスを割り当てるため、有線LANをつなぐかWi-Fiの設定を済ませるだけでネットワークには接続できます。問題は「割り当てられたアドレスが何番なのか」を本体側で確かめる方法です。とくにディスプレイをつながないヘッドレス運用では、画面で確認できないぶん、コマンドで素早くアドレスを調べる手順を知っておくことが接続の前提になります。ここでは現在のIPアドレスを確認するコマンドと、ネットワークの状態を詳しく見る方法、そして名前で接続を楽にする工夫を押さえます。
IPアドレスを手早く確認する hostname -I
最も手軽なのは hostname -I です。これは余計な情報を省いて、その機器に割り当てられているIPアドレスだけを空白区切りで表示します。たとえば hostname -I と打つと 192.168.1.50 のように返り、有線と無線の両方が有効なら複数のアドレスが並ぶこともあります。SSHでつなぐ宛先をひとつ知りたいだけ、という場面ではこれが一番速くて確実です。なお、大文字の -I(アイ)であることに注意します。小文字の hostname -i は名前解決の結果を返す別の動作で、環境によっては 127.0.1.1 のような自分自身を指す値しか出ず役に立たないことがあります。アドレスだけをぱっと知りたいときは hostname -I、と覚えておきましょう。
状態まで詳しく見る ip addr
インターフェース名や、その回線が今つながっているか(UP/DOWN)といった詳しい状態まで見たいときは ip addr を使います(ip a と短く書けます)。実行すると、ループバックの lo、有線LANの eth0、無線LANの wlan0 といった各インターフェースごとに、状態とアドレスが一覧表示されます。lo は自分自身を指すループバック(127.0.0.1)で常に表示され、外部との通信には使いません。eth0 や wlan0 の行にある inet の後ろの値(例: inet 192.168.1.50/24)が、そのインターフェースのIPv4アドレスです。末尾の /24 はサブネットマスク(アドレスのうちネットワークを表す部分が24ビットあること、255.255.255.0 と同じ意味)を表します。行頭付近に state UP とあれば回線が有効、state DOWN ならつながっていません。たとえばケーブルを挿したのに通信できないとき、ip addr で eth0 が DOWN のままになっていないかを見れば、配線とソフト設定のどちらに原因がありそうか切り分けられます。インターフェース名の eth0 は有線LANの0番目のポート、wlan0 は無線の0番目を表す名前です。なお、古い教材でおなじみの ifconfig は新しいRaspberry Pi OSには標準で入っていないことがあり、その場合はこの ip addr が代わりになります。
ネットワーク設定とホスト名
Wi-Fiの接続やホスト名の変更は raspi-config からも行えます。sudo raspi-config を開き、「5 Localisation Options」でWi-Fiを使う国を設定したうえで、システム設定からSSIDとパスワードを入れればWi-Fiにつながります。ホスト名は「1 System Options」の Hostname から変更できます。ここでホスト名を決めておく利点が大きく、同じLAN内なら ホスト名.local という形でIPアドレスの代わりに名前で接続できることが多いからです。たとえばホスト名を raspberrypi にしておけば ssh pi@raspberrypi.local でつながり、毎回アドレスを調べ直す手間が省けます。これは前述のmDNSという名前解決の仕組みによるもので、ヘッドレス運用と相性が良い工夫です。複数台を運用するなら、pi-sensor01・pi-camera のように役割が分かるホスト名を付けておくと、どの機器に入っているかを名前だけで区別でき、取り違えを防げます。
なお、新しいRaspberry Pi OS(Bookworm 以降)ではネットワーク管理の仕組みが NetworkManager に変わっており、設定をコマンドで行う場合は対話メニューの nmtui や、スクリプト向けの nmcli を使います。たとえば今つながっているWi-Fiやアドレスの状況は nmcli device show で確認でき、固定IPにする・別のWi-Fiに切り替えるといった操作もこれらで行えます。古いOSで使われていた設定ファイル方式(dhcpcd など)とは作法が異なるため、ネット上の古い手順をそのまま真似ると食い違うことがあります。ただ、画面の見た目やコマンドが変わっても「IPアドレス・サブネットマスク・ゲートウェイ・DNS」という設定すべき4項目の意味は変わりません。この4つが何を表すかを押さえておけば、どの方式でも落ち着いて設定できます。
よくある失敗と実務の使いどころ
つまずきやすいのは、まず hostname の -I を小文字 -i と取り違えて、自分自身を指す値しか出ずに「アドレスが分からない」と悩むパターンです。アドレスだけ欲しいときは大文字の -I を使います。次に、DHCP環境ではIPアドレスが起動のたびに変わりうる点です。昨日つながった番号が今日も同じとは限らないので、アドレス直打ちで運用していると突然つながらなくなります。これを避けるには、ホスト名.local で名前接続にするか、ルータ側でそのRaspberry Piに常に同じアドレスを配る設定(DHCP予約)にするか、本体側を固定IPにするのが定石です。常時動かすサーバやセンサー端末では、アドレスが動かないこの安定性が効いてきます。日々の作業では「つながらない」と感じたら、まず本体で hostname -I と ip addr を打ち、そもそもアドレスを持っているか、回線がUPかを確かめる——この一手が、ネットワーク調査のいちばん確実な出発点になります。