クラウド・VPSで自分のサーバを持つ
自分のパソコンに手を加えずにLinuxを持つ方法として、VPS(仮想専用サーバー)があります。月額数百円ほどからインターネット上に自分専用のLinuxマシンを借りられ、sshで接続してどこからでも操作できます。この章ではVPSの仕組みと、公開サーバーならではの心構え、そして「壊しても作り直せる」練習台としての魅力を紹介します。
WSLも仮想マシンもラズパイも、自分の手元にある機械を使う方法だった。この章で紹介するVPSは方向性が異なり、機械そのものはインターネットの向こう側にあるクラウド事業者のデータセンターに置かれている。
VPSはVirtual Private Server(仮想専用サーバー)の略で、事業者が持つ大きな物理サーバーを仮想的に区切り、その一区画を自分専用のLinuxマシンとして借りる仕組みだ。使い方の感覚としては、これまで見てきた仮想マシンとよく似ている。
💰 費用感とプランの選び方
VPSは多くの事業者が月額課金制のプランを用意しており、最も小さなプランなら月数百円程度から借りられることが多い。無料枠を用意しているクラウド事業者もある。
スペック(CPUやメモリの性能)が上がるほど料金も上がっていくので、最初は練習用として最小構成のプランを選び、必要になったら増強する、という進め方が無理がない。
🔑 sshで接続して操作する
契約が済むと、事業者の管理画面からVPSのIPアドレスが発行される。あとはラズパイのときと同じく、母艦のパソコンからsshコマンドで接続すれば、そこはもう自分専用のLinux端末だ。
接続してしまえば、これまでのトラックで学んだコマンド操作がそのまま通用する。ファイルを置く、パッケージを入れる、サービスを動かす、といった作業をすべて自分の裁量で行える。
「借りたマシンだから遠慮する」必要はない。契約している区画の中であれば、設定変更もソフトの追加も自分の判断で自由に行ってよい。そこが自分専用のLinux環境だという実感を、まずは軽い操作から確かめてみるとよい。
🌐 世界に公開される、という責任
VPSがラズパイや仮想マシンと大きく違う点がひとつある。多くの場合、最初からグローバルなインターネット上に置かれ、世界中のどこからでも通信が届く状態にあることだ。
そのため、VPSを持つなら「定期的な更新」と「パスワードに頼らない鍵認証でのログイン」がほぼ必須の心構えになる。この2点は、この後のトピックで具体的な手順とあわせて扱う。
♻️ 壊しても作り直せる練習台
VPSのもう一つの利点は、いつでも作り直せる気軽さだ。多くの事業者は、失敗したVPSを削除して数分で新しいものを立ち上げ直せる仕組みを用意している。
多くの事業者は、現在のVPSの状態をまるごと保存しておくスナップショット機能も提供している。何か大きな変更を試す前にスナップショットを取っておけば、失敗しても保存した時点まで一気に巻き戻せる。仮想マシンのスナップショットと同じ考え方が、ここでも活きてくる。
スナップショット機能は事業者やプランによって提供の有無や保存できる数、追加料金の要否が異なる。使いたい場合は契約前に公式サイトの説明で対応状況を確認しておくと安心だ。
複数のVPSを使い分ける発展的な運用も視野に入れておくとよい。たとえば練習用と本番用を分けておけば、練習中の失敗が本番の環境に影響することはない。最初から作り込みすぎず、必要になったときに増やしていく感覚で十分だ。
この章では、ネットの向こうに自分だけのLinuxを持つVPSを紹介した。次の章では、実際にサーバーやVPSを手にしたあと、最初にやっておくべき設定をまとめて確認する。