仮想マシンで安全に試す
「壊すのが怖いから触れない」という不安には、仮想マシンという答えがあります。パソコンの中にもう1台分の仮想的なパソコンを作り、その中でLinuxをまるごと動かす方法です。この章では仮想マシンの考え方と、失敗しても一瞬で元に戻せるスナップショットという安心の仕組みを紹介します。
前の章のWSL2はとても手軽だが、「デスクトップ画面ごとLinuxを体験したい」「思い切り設定をいじって壊してみたい」という場合には、仮想マシンという方法がより向いている。
仮想マシンとは、いま使っているパソコンの中に、ソフトウェアの力でもう1台分のパソコンを疑似的に作り出す技術のことだ。その中で、Windowsとはまったく別のOSであるLinuxを、まるごと1つ動かせる。
前の章のWSL2は、あくまでコマンドライン中心の間借り環境だった。仮想マシンはそれとは違い、起動画面からログイン画面、デスクトップの壁紙まで、Linuxという1つのOSをまるごと体験できる。
🖥️ ホストとゲストという言い方
仮想マシンの世界では、元になっているパソコン側を「ホスト」、その中に作られる仮想的なパソコン側を「ゲスト」と呼ぶ。今回の例なら、Windowsパソコンがホスト、その中で動くLinuxがゲストだ。
仮想マシンを作るには、VirtualBoxのような仮想化ソフトをホスト側にインストールし、そこにLinuxの「まるごとの姿」が入ったISOイメージという1つのファイルを読み込ませる。
ISOイメージとは、インストール用のディスクの中身をそのまま1つのファイルに閉じ込めたものだ。多くのディストリビューションは、公式サイトからこのISOイメージを無料でダウンロードできる。
💾 メモリとディスクの目安
仮想マシンを作るとき、ゲストOSにどれくらいのメモリとディスク容量を割り当てるか聞かれる。最初はメモリ4GB程度、ディスクは25GB程度から試してみるとよい。
ディスクの割り当ては「可変サイズ」を選んでおくと、実際に使った分だけホスト側の容量を消費する設定にできることが多い。最初から上限いっぱいを消費するわけではないので、必要以上に心配しなくてよい。
📸 スナップショットという保険
仮想マシンの大きな魅力は、スナップショットという機能にある。これは、その時点のゲストOSの状態をまるごと記録しておき、あとから同じ状態に瞬時に戻せる仕組みだ。
何か新しい設定を試す前にスナップショットを撮っておけば、たとえ失敗してシステムが壊れたとしても、数秒でその直前の状態に巻き戻せる。まさに練習用のやり直しボタンだ。
🔍 ゲストの中で最初に確認すること
無事にゲストOSが起動したら、まずは今動いているLinuxの情報を確認してみるとよい。カーネルの名前やバージョンを表示する uname というコマンドと、ディストリビューションの情報を表示する lsb_release というコマンドがよく使われる。
🆚 WSL2との使い分け
ここまで読むと、WSL2と仮想マシンのどちらを使えばいいか迷うかもしれない。手軽さを取るならWSL2、Linuxの世界をまるごと体験したいなら仮想マシン、という住み分けで考えるとよい。
両方を併用することも珍しくない。普段のコマンド練習はWSL2で手早く済ませ、デスクトップ画面が必要な作業やネットワーク設定の練習だけ仮想マシンで行う、という組み合わせ方もできる。
これでLinuxを自分の手元に用意する方法が一通りそろった。WSL2でも仮想マシンでも、怖がらずに手を動かして試せる環境が手に入ったはずだ。ここから先は、実際にコマンドを打ちながら学ぶ章に進んでいこう。