ラズパイという入口——安くて壊しにくい実機
WSLや仮想マシンはパソコンの中に作る仮のLinuxですが、Raspberry Pi(ラズパイ)は数千円で買える本物のLinuxマシンです。電源を入れっぱなしにしても電気代はごくわずかで、失敗しても被害はSDカード1枚分にとどまります。この章ではラズパイをLinuxの実機入門に選ぶ理由と、microSDへの書き込みからssh接続までの最短ルートを紹介します。
ここまでWSL2や仮想マシンで、パソコンの中に「仮のLinux」を作る方法を見てきた。この章ではもう一歩進んで、本物のLinuxマシンを手元に置く選択肢を紹介する。
その入口としてちょうどいいのが、Raspberry Pi(ラズパイ)というクレジットカードよりひと回り大きい基板だ。数千円から買え、電源とmicroSDカードさえあれば、それだけで独立したLinuxマシンとして動く。
🔌 なぜ実機をわざわざ用意するのか
WSLや仮想マシンで十分にコマンドの練習はできる。それでもラズパイのような実機には、仮想環境にはない強みがいくつかある。
ひとつは常時稼働のしやすさだ。消費電力が小さいため、24時間つけっぱなしにしても電気代はごくわずかで済む。自宅サーバーの練習や、簡単な常駐サービスを動かし続ける用途に向いている。
もうひとつは壊しても被害が小さいことだ。設定を壊してもmicroSDカード1枚を書き直せば数分で元通りになる。母艦のパソコンには一切手を触れないので、思い切った実験がしやすい。
そして電子工作への広がりも大きな魅力だ。ラズパイには基板の端に小さなピンが並んでおり、LEDやセンサーをつないでLinuxから直接制御できる。ソフトの学習が、そのままハードを動かす楽しさにつながっていく。
💾 Raspberry Pi Imagerで書き込む
ラズパイは本体にストレージを内蔵していない。かわりにmicroSDカードにOSを書き込み、それを差し込んで起動する。この書き込み作業には、公式ツールのRaspberry Pi Imagerを使うのが最も簡単だ。
Raspberry Pi ImagerはWindows・macOS・Linuxのどれからでも使えるアプリで、母艦のパソコンにインストールして使う。OSの一覧から入れたいものを選び、書き込み先のmicroSDカードを選ぶだけで、複雑な手順を意識せずに準備が終わる。
🖥️ 画面もキーボードもつながずに使う——ヘッドレス設定
ラズパイにモニターやキーボードを別途つなぐ方法もあるが、この章ではもっと手軽な運用を紹介する。画面を一切つながずに、母艦のパソコンから遠隔でログインするヘッドレス運用だ。
Raspberry Pi Imagerには、書き込み前に詳細設定を開く機能がある。ここでSSHをあらかじめ有効化しておき、接続したいWi-Fiのネットワーク名とパスワードも入力しておくと、初回起動と同時にネットワークへつながり、sshでのログインを受け付ける状態になる。
🔑 ssh で入って母艦から操作する
起動が終わり、Wi-Fiへの接続も済んだら、母艦のパソコンのターミナルからssh コマンドで接続する。ラズパイ側にはホスト名が設定されており、多くの場合は raspberrypi.local という名前でネットワーク上から見つけられる。
raspberrypi.local で見つからないときは、先に ping raspberrypi.local を試すとよい。応答が返れば名前解決とネットワーク到達の両方が生きている証拠で、原因の切り分けがしやすくなる。
🌱 ここから広がる世界
いったんsshでログインできてしまえば、あとはこれまでのトラックで学んだコマンドがそのまま通用する。ls でファイルを見る、apt でパッケージを入れる、といった操作に、実機だからという特別な違いはほとんどない。
違いが出てくるのはむしろここからだ。基板の端に並んだピン(GPIO)を使えば、LEDを光らせたりセンサーの値を読んだりと、Linuxのコマンドが現実のモノを動かす体験に直結する。ソフトだけでは味わえない手応えがある。
この章では、実機のLinuxマシンを迎え入れるところまでを扱った。次はUSBメモリから起動する方法や、1台のパソコンにWindowsとLinuxを同居させる方法を見ていく。